ほしのちラボの活動レポート|ラボ☆レポ:研究室訪問|KANAIGAKUEN ACTION BOOK|金井学園

県内大学等連携研究推進事業の採択


今回取り上げるのは「ほしのちラボ」。正式には、「地域資源としての星空の価値の見える化に関する研究」を行う研究チームです。

「星空」と「ヒト」をつなぐ次代を見据えたふくいブランドの創出を目指すことをミッションとして、福井工業大学内の学部学科を超えたメンバーが声を掛け合って集まり、さらに福井大学、福井市自然史博物館のメンバー等が加わって構成された研究チームで、平成29年度県内大学等連携研究推進事業に応募し採択されたことで本格的な活動が開始されました。

この研究チームの中心となるメンバーには、研究代表に福井工業大学建築土木工学科の吉村先生、電波天文学の中城先生、都市デザインの三寺先生、グラフィックデザインの近藤先生等が名前を連ねています。また、今回採択された連携事業では、福井市自然史博物館分館のセーレンプラネットの前定さん、同博物館学芸員で天文担当の加藤さん、福井大学の地学研究室の山本先生というメンバーが加わって研究を行います。

ほしのちラボの「ほしのち」とは、
星の地(土地・地域)ならではの
星の値(価値)を高め
星の知(知識や知恵)を情報発信して
その魅力をさらに磨き上げていきたいという思いが込められています。

この「ほしのちラボ」の活動を広報するためにロゴマークも作成されました。星がうまく図案化された地球儀をモチーフにされたようなデザインは、近藤先生が授業の中で学部の2年生に課題として与えられたものの中から選ばれたものです。最終的に優秀な作品を5つほどに絞った中から、採用されたのが、下の写真の中央にある小坂尚也くんのデザインでした。


ほしのちラボのイメージロゴ(写真中央)

 

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ふくいフェニックスプロジェクトとの関係


このチームがミッションとしている研究が始まった要因には、福井工業大学が進めている平成28年度に採択を受けた文部科学省の私立大学研究ブランディング事業「ふくいフェニックスプロジェクト」も大きく関係しています。

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(以下 大学公式HP特設サイトより抜粋)=その背景には、恐竜・繊維・眼鏡など全国区のブランドと連携し、次世代に発展させる新しい地域ブランドが求められる中、JR福井駅前に2016年4月に開業した商業施設ハピリンには、宇宙をテーマにした福井市自然史博物館分館「セーレンプラネット」が開館し、また、超小型人工衛星の平成31年度打上げを目指す「県民衛星プロジェクト」が始動するなど、『宇宙』を新しいブランドとする地域創生への挑戦が始まっていることがあります。一方で、福井県立児童科学館「エンゼルランド」(名誉館長 宇宙飛行士 毛利衛氏)や福井県北東部の大野市の「日本で最も美しい星空」など、独自の宇宙関連資源もありますが連携が弱く、まちづくり・デザインの観点も含めた宇宙関連資源の価値の再認識・充実化、他資源との連携の検討が必要となっているのです。

北陸地域最大の直径10mパラボラアンテナなどをキャンパスに備え、宇宙環境を利用した研究ブランドの確立を目指す福井工業大学が、地域と連携しながら、「A:宇宙研究軸」「B:観光文化研究軸」「C:地域振興研究軸」の3つの研究軸に沿った事業を推進し、新たに『宇宙』を福井の地域イメージとして定着させることで、観光や文化、地域産業の振興を実現することを目的とした事業は、それぞれ2年目を間もなく終えるにあたり、着実な成果を上げています。
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これに併せて、今回の採択された事業では、このプロジェクトの「A軸」と「B軸」、つまりは「星空」と「観光」をつなぐことに特化した研究として福井県の事業予算を獲得しました。もちろん、大学研究ブランディング事業とは大きく関連する研究テーマですので、連携をとって行っていくこなりますが、このチームの場合は福井大学や福井市自然史博物館との共同チームとして活動することで、より特色ある事業展開が期待できます。


ふくいフェニックスプロジェクトでは「A:宇宙研究軸」を牽引する中城先生の資料の一部

 ◇ ◇ ◇

 


コアメンバーが語る活動への思い


最初にも述べたとおりこの研究チームのテーマは「地域資源としての星空の価値の見える化に関する研究」です。具体的には3つの研究成果をもとに実績をあげたいと考えています。

その3つとは以下のとおり。
① 星空の価値の数値化 ⇒ 星空の美しさを科学的に測定し数値として見える化
② 星空の価値の情報発信 ⇒ 様々な光学機材やICTを駆使してその情報を見える化
③ ①②の2つと福井の地域資源を結び付けたブランド戦略提案

採択から1年を迎えるにあたり、①の調査、②のコンテンツなどが集まりつつある中で、それを見える化するひとつの活動として企画されたのが「ほし×まち歩きワークショップ」です。

その話はまた後ほどにしますが、まずは「ほしのちラボ」コアメンバーである学内の4人の先生(吉村先生、中城先生、三寺先生、近藤先生)に集まっていただきもう少し掘り下げたお話を聞きました。

 

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3月2日午後 デザイン学科コモンズスペースにて
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約束の時間に少し遅れてしまったのですが、そこには既に資料や記録用の機材を準備してくださり、4人が何やらすでに盛り上がっていました。さすがチームワークが良いコアメンバーの皆さんです。春休みに入り学生が少ないせいもあり、ここは本当のほしのちラボなのか?と勘違いするほどです。(実際にはチームの総称なので物理的なラボは存在しません)

まずは、持参いただいた資料など見ながら、前半で書いたような「ほしのちラボ」がどのような経緯で生まれ、これまで約1年活動してきたかを聞きます。

 

 ◇ ◇ ◇

 

ーこの「ほしのちラボ」という名前はどこからきたんですか?

 

中城先生:「もともと電波天文学が専門で、自分の研究としても星には興味がありましたが、あまりに当たり前のものだけに専門的な視点からだけで説明してもその魅力は伝わらないと感じていました。でもどうしたらわからない。そこに違う視点の研究チームメンバーからの助言がとても大きな意味があります。とにかく多くの人に魅力を知ってもらうための何らかのインターフェィスが必要だとは感じていたんです。」

吉村先生:「僕もこの県内大学連携研究推進事業に採択された時から、事業名が長すぎるのでもう少し短くて親しみやすい名称をこの研究チームに付けたいと思い、色々な案を出して広報担当の近藤先生に提案したんですけど、全て却下されました(笑)。そして、近藤先生がこのほしのちラボのコンセプトを思いついてくれました。」

近藤先生:「もともと別の研究プロジェクトに、しまあめラボという名称をつけているんですが、それをベースに今回の研究を表現するためにシンプルかつコンセプトがうまく表現された名前になったなと思います。」

 

ーほしのちラボの研究目的として、魅力を情報発信するにはまさに最適だと思います。まさにブランド戦略ですね。


学生さんが休みになったデザイン学科コモンスペースに集まった4名

広報や記録担当 近藤先生の機材の数々


ほし×まち歩き ワークショップ 開催


ーさて、こうして星空の基礎データ収集が進み、広報の基盤も固まったところで、次は星空と地域資源をどう結びつけていくかをお聞きしたいのですが。

吉村先生:「この研究事業として一年が経過しますので、一つの成果として学生に協力してもらってワークショップを開催しました。それが『ほし×まち歩き』です。この研究チームメンバーだからこそできた企画です。」

三寺先生:「私の専門はまちづくりと景観なので、星空を街なかで見るー夜間景観ーことの魅力を何とか見つけ出したいんです。どこからでも見える星空ではなく、ここから見る星空が素晴らしいと感じてもらいたい。それには何か参加型の活動が必要だと思い、星とまち歩きのワークショップの企画につながります。実際に学生と福井駅前の景観と星空を『見上げる』ことは、駅前を拠点に活動している私自身にとっても新鮮な体験でした。」

ーそれで、ただ星を見るのではなく360度の画像を写すことのできるTHETAというカメラで空と景観撮影することの意味が理解できますね。

近藤先生:「このカメラで撮った画像はJPEGで保存されるので、取り扱いやすくSNSなどではとても面白い画像をアップできます。この雲台は星の動きに合わせてゆっくり動くので長時間の画像も撮影することができます。」


星空とまちを撮影するカメラと機材

機材の説明をする近藤先生


ーまち歩きを体験した学生も写真を撮るというより、まち歩きを体感するような感覚だったと話していたのが印象的でした。ところで、あの日は少し雲が出てしまい星は見えにくかったようでしたが、福井の星空はどこでも楽しめるものなんですか。

中城先生:「そもそも星が綺麗に見えるためには空の暗さが大切なんです。福井県の星空はそんなに美しいのかと思われるかもしれませんが、このラボにも協力いただいている「オヤット天文クラブ」さんの調査結果によると、2004年、2005年には、大野市の南六呂師が日本一美しい星空であるとして環境省の認定を受けたことがあるんです。

その美しさを科学的に測定し、その価値を見える化することがこのチームでの私の主な活動ですね。しかも、観光資源と結びつけるために福井の幾つかの場所を選んで現在も測定を進めています。
どこにでもある星空ですが、星空を嫌いだという人は聞いたことがありません。ところが、この星空が美しさで他の県に負けないことを福井の人たちはほとんど知りません。見えるのが当たり前になってしまっているんです。実は素晴らしい資源であることを、もっと多くの人に知ってもらいたいんですよ。」


セーレンプラネットで見た六呂師高原の星空写真(福井市自然史博物館学芸員 加藤さん撮影)

 

  ◇ ◇ ◇

 

 【ほし×まち歩きワークショップ 開催概要】

 


こうした想いから、「ほし×まち歩きワークショップ」が2月22日(木)と24日(土)の2日間で開催されます。初日は大学連携授業が行われるFスクエアに集合、thetaという360度カメラを持って学生たちが夜のまち歩きをしながら福井の星空を楽しみました。そして2日目は撮影した写真をセーレンプラネット内の2メートルドームシアターに投影しワークショップを行いました。

福井工業大学と福井大学の様々な学部学科の学生が集まって、このワークショップを通じた意見交換を行う中で、ブランド戦略の方向性を探りました。今後もこうした学生間の交流は継続して行われ、研究のみならず学生の教育活動にも大きな成果が期待されます。


カメラ操作やまち歩きの説明中

360度カメラで撮影中

360度カメラで撮影中

 

 1日目18:00-21:00 Fスクエアで説明を聞いた学生たちは、いざ福井の夜のまち歩きへ


機材オペレーションの前定さん

撮った写真を学生が説明

学芸員の加藤さんと福井大学の山本先生

 

 2日目10:00-12:00 セーレンプラネットで自分たちの撮った画像を互いに説明します

 


学生による将来構想会議

1グループ目の発表

2グループ目の発表


 

 2日目10:00-12:00 ほしまち活動の今後を話し合った結果の考えを共有


ークショップを終えたみんなで集合写真 広報のための横断幕まで用意されていてました(驚)

 

 ◇ ◇ ◇

 


終わりに


綺麗な星空が見えるのは、何も六呂師のような人里離れたところだけではなく、まちの中でも十分楽しめることが調査やワークショップからも実証されてくる中で、三寺先生の公共交通との関わりや、大学が連携している自治体、例えば大野市、勝山市、坂井市、鯖江市などの地域と連携、吉村先生が最近関わった和田高浜とのコラボレーションなど、ブランド戦略はその「コト」(地域資源)と「トコ」(場所)の数だけ膨らんでいきそうです。

吉村先生:「このプロジェクトをやっていく中で、近い将来、星空とその地域の資源や観光について語れるコンシェルジュみたいな人材が育ってくれないかな、と思っているんです。福井は素晴らしいものが沢山あるのに、まだまだ情報発信が足りませんから。」

−「ほしのちコンシェルジュ」− なかなか良い響きだと思います♪ そんな人材を育成するために、まずはこの4人が北極星のように輝いて、このラボのみんなをナビゲートしてくれることでしょう。


 

文責:金井学園広報 KEI NEWS STAND /


 ほしのちラボ コアメンバーのプロフィール(写真左より)

 


吉村朋矩 >建築土木工学科 准教授/博士(工学)
代表的研究内容:次世代へ引き継ぐための交通計画

近藤 晶 >デザイン学科 講師/修士(工学)
代表的研究内容:正しく楽しく伝えるグラフィックデザイン

三寺 潤 >デザイン学科 准教授/博士(工学)
代表的研究内容:地方都市における「都市デザイン」

中城 智之 >電気電子工学科 教授/博士(理学)
代表的な研究内容:リモートセンシングによる環境計画

福井工業大学公式ページ 学部紹介より リンクはこちら
※データはH30.3月時点

 

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