小原エコプロジェクト:限界集落の再生にかける13年目の夏~ラボ☆レポ|研究室訪問~|KANAIGAKUEN ACTION BOOK|金井学園

 

小原エコプロジェクトとは

 

福井工業大学の研究室(ラボ)を訪問してその研究活動を紹介(レポート)する「ラボ☆レポ」の7回目。 今回は建築土木工学科の多米研究室を中心に集まった建築土木工学科の学生たちの暑い夏のチャレンジをご紹介します。

 


「小原ECOプロジェクト ~ふるさとを守る~」 ふるさとの「生活遺産」を学生の手で残す。

地方の過疎化は日本が抱える深刻な問題。福井県山間部にある小原集落も廃村の危機に瀕し、伝統的木造建築など、歴史的価値の高い景観が失われようとしています。そこで本プロジェクトでは、夏休み期間を利用し、学生たちが大工棟梁の指導のもと、空き家になってしまった古民家を泊まり込みで修復。さらに、祭りやカフェの運営を企画するなど、ふるさと再生に取り組んでいます。2015年度には、「ふるさとづくり大賞」の最高賞である内閣総理大臣賞を受賞。昨年は、民家に併設してピザ窯をつくるなど、13年目を迎える本プロジェクトは年々スケールアップしています。体験学習を通して、楽しみながら地域の問題に挑んでいます。( 福井工業大学公式ウェブサイト より引用)

 
 


小原エコプロジェクト参加の学生たち

補修している家屋の下地に書かれた学生たちの名前

このベランダに吹く川風は最高と笑顔の多米教授


◇ ◇ ◇

 

実際に小原を訪問した日は、台風が奄美地方に接近しているということで、非常に蒸し暑く風もやや強い8月下旬でした。福井県勝山市街までは、福井の観光の目玉である恐竜博物館のおかげか中部縦貫道が整備されとても快適に到着。そこから白山道路を石川県境に向かって157号線を車を走らせます。小原地区へ到着するまでにも、美しい里山や棚田の風景を眺めながら現地まで快適に行くことができます。

小原につくと、赤兎山登山道の入り口の手前に県が整備した休憩所、「小原星の駅」が出迎えてくれます。多米教授にあとで聞いた話では、この休憩所の名前を決めて看板を書いたのは先生方だということでした。

 

― (多米教授) ―
「この小原地区はとても星が綺麗なんですよ。そこで、この小原星の駅という名前を付けました。現在、福井工業大学では星空をテーマにした「研究ブランディング事業~ふくいフェニックスプロジェクト~」が進められていますが、このプロジェクトメンバーの先生方から多米先生は先見の明があるねぇ、と言われます。

 実際、このプロジェクトの観光文化をテーマとした事業の一つとして、9月23日にこの小原に一般の人を対象とした星空観賞ツアーを行う予定です。えちぜん鉄道さんのご協力もいただいた本格的な観光ツアーで、現在学生たちが修復を進めている家屋には立派な炊事場も備え付けるんですよ。ツアー客の皆さんにはそこで食事をしていただいて、ここからもう少し車で山を登った所の登山道入り口駐車場で星空観賞をします。ね、星とご縁があるでしょ?」

と、来月のツアーのお話も聞かせていただきました。
 

「小原星の駅」の奥の休憩場所には、このエコプロジェクトで奮闘してきた学生たちの様子がパネルで紹介されています。ぜひ中の方まで足を運んでみてください。トイレ休憩にも最適ですよ。


小原星の駅 外観

男女のトイレ その奥には眼下に川を望む休憩スペースがありました

学生たちの小原エコプロジェクトでの様子がパネルで紹介されています


 

 

今年の活動の様子

 

「星の駅」の近くに車を停め、声のする方向に足を進めます。このプロジェクトが始まった10数年前に修復をしたという家屋が、集落の斜面の上のほうに見えました。今年度は少し川に近い斜面の下の方で作業が進められています。学生たちのアイディアで作られたピザ窯の近くのベース基地的な家屋に多米教授の姿を見つけると、

― 「遠いところをようこそ。とりあえずコーヒーでも淹れますよ。」 ― と招き入れて下さいました。

ちょうどお昼休憩を終え午後の作業が始まる午後2時前。ご指導下さっている大工の棟梁の方の掛け声で、「頑張って行こう!」と学生たちが声をあわせていたところだったので、少々恐縮しながらその家屋の中に入ります。すると、その部屋の片隅には平成28年に内閣総理大臣から送られたこのプロジェクトに対する表彰状が置かれていました。多米教授がご自分の恩師である吉田純一先生と共に続けてこられた活動の歴史とご苦労話をお聞きしながらコーヒーをいただいた後は、いよいよ作業現場を見せていただくことにしました。

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この表彰については、大学ウェブサイトのお知らせのリンクを張りますので、どうぞご覧になってください。
参照リンク : 内閣総理大臣賞表彰式 "小原ECOプロジェクト”平成27年度ふるさとづくり大賞|福井工業大学ウェブサイト|2016.3.11|
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中央の家屋の建つ舗装道路を下ります

今年の日中の活動拠点 手前にピザ釜が見えます

コーヒーをいただいた家屋内の囲炉裏端

平成27年ふるさとづくり大賞 内閣総理大臣賞 受賞


 

作業の進む家屋の修復の様子

 

最初にお邪魔した家屋のすぐ隣で、今年度の修復活動が進んでいます。その隣には、いずれ休憩所として使用する予定の場所が、木材加工のスペースとして使われています。最初に多米教授のお話の中でご紹介した9月の星空観賞ツアーで食事をとるために使用するのが、この家屋となります。1階には炊事場と台所、居間のスペースを作り、ツアー客にはエコプロジェクトメンバーで地域住民の方による特製のお弁当を食べていただく場所となるそうです。2階の内装工事部分はほぼ完成しており、学生のみんなが最後の仕上げ確認や掃除を行っているところを見せてもらうことができました。内装の土壁も学生が塗ったものだということです。

小原地区の家屋はこのように内装は土壁、外装には自分たちが切り出してきた木材の板を張り付けてあります。板が古くなると自分たちでまた張り替える。そのために家屋の中には予備の木材もたくさん置かれていたのだといいます。
 

― (多米教授) ― 「小原の建築は、勝山市街の家とは違いどちらかというと峠を越えた白山市の建築様式と類似しているんです。ほんの数十年前まで今のように立派な県道が整備されていませんでしたから、勝山市まで行くことは大変な一大イベントだったようですね。ですから、どちらかというと、峠を越えた石川との文化交流が多かったのでしょう。それがこの小原の独特の景観を作っているのです。今ではたった一人しか暮らしていない超限界集落の貴重な建築文化なので、なんとか残していきたいですよね。」

 


修復中の家屋横 学生が建てた休憩所

修復中の家屋1F

修復中の家屋2F

 ◇ ◇ ◇


夏休みが始まった8月初旬に小原入りして、かれこれ2週間、平日はこのテレビもインターネットもない環境を楽しんでいる様子の学生たちと話をしているとこちらが何か忘れていたことを思い出させてもらえる気がしました。ようやく完成が見えてきた今回の家屋の修復。無事9月の星空観賞ツアーに間に合うことを祈っています。


修復中の家屋の内装壁

今回の参加学生の宿泊している山の斜面上部にある家屋

地区の川沿い近く 大きな岩の上に立っていた家屋


 

これからに残したい 里山の景観

 

小原の険しい斜面に積み上げられた石組みと平らにならされた地面、石造りの階段、こじんまりとした個人用の畑、地区の生活を支えた清流や湧水。さらに小原に向かう途中にひろがっていた美しい棚田。人の手が入らなければできなかった景観と人の手が入らなければ今後失われてしまうであろう故郷。多米教授の言葉の中にもありましたが、なんとかこの貴重な財産を後世に残すために出来ることは、小原エコプロジェクトのような継続した地道な活動による交流人口の増加への取組しかありません。

13年目の夏を迎えた福井工業大学における地域活性化の先駆者的なプロジェクト - 小原エコプロジェクト - が、これからも多くの方の支援協力や関心を得て続いていくことを願いつつレポートを締めくくりたいと思います。


地区内にある地下水

小原地区に流れる清流

小原に向かう途中に広がる棚田の風景

 

Edited by KEI NEWS STAND 金井学園広報

 

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 ▽▽▽ 文中 多米教授の話に出てきた星空観賞ツアーの詳細はこちらからどうぞ。



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