2019/12/14 AOSSA5F 大学連携センターFスクエア
ワーキングのリーダー、福井工業大学環境情報学部デザイン学科の川島主任教授による代表挨拶で始まった、「ふくいCOC+」ふくいブランド創出ワーキンググループの成果発表会&記念フォーラム。プレス向けにリリースしていたためその対応もあったが、何より5年間の活動の中でも幾度となく広報として取り上げさせていただく機会のあるワーキンググループであったこともあり、楽しみにしてその成果発表会に参加した。
文部科学省補助金事業「ふくいCOC+」は、福井大学を主幹校として2015 年度から2019 年度の5 年間、県内すべての4年制大学(福井大学、福井県立大学、福井工業大学、仁愛大学、敦賀市立看護大学)が協同し、福井県および産業界・医療界等と一体になって、地域の持続的な発展とイノベーションを推進する担い手を育てようとする事業である。学卒者の地元定着率向上を目標に、地元も問題解決に取り組む人材育成、福井として特色ある人材育成、外国人留学生の受入れ拡大と地元定着の促進に加えて、産学官金連携による地域産業特にふくいブランドを創出する地場産業の振興」を課題に掲げてその活動を続けてきた。
福井工業大学デザイン学科が幹事校を務める「ふくいブランド創出ワーキンググループ」は、福井の地域資源のブランド価値を高めることを目的とした活動を進め、これまでに成果をまとめた報告書として『だから、福井で暮らしたい。』という冊子を2019 年2月に刊行している。今回は、福井大学による成果を含めたワーキンググループとしての最終成果発表を行うとともに、福井の地域資源について卓識ある専門家たちと一緒に、今後の活動の可能性や大学の役割などを議論するフォーラムを開催することとなった。
ワーキンググループは、福井大学と福井工業大学の教員、学生を中心に食チーム、モノチーム、コトチーム、 ヒトチームの4チーム編成で活動していた為、それぞれのチームの代表学生による発表が行われた。
1人目は、食チームとして福井大学 石川さん。酒粕エキス配合のアルコール消毒液を考案。酒粕が美肌成分を含んでいることから、消毒液を頻繁に利用し手荒れを起こしやすい看護師さんなどからのニーズに応えるという。酒粕エキスに含まれるアミノ酸によって手の水分が失われにくくなるなどの効果もあり、今後商品化に向けさらに研究が進むことが期待される。
2人目の福井工業大学の岡本君も同じく食チームとして「へしこ」をテーマに実施したイベント~「へしこサミット」を中心に活動の概略を報告した。現在4年生の岡本君は、大学院に進学し、ふくいブランドとしての「へしこ」のブランド化についての研究を継続することを希望しており、このワーキング活動の人的成果と言える。
3人目は、福井工業大学大学院生のスタッスポンパンさん(タイ王国出身)からのものチームとしての報告。福井の伝統工業である越前和紙と越前焼の陶器をイメージした作品について説明があった。岡本君の発表にあった「へしこサミット」開催に合わせ、福井の四季をイメージして製作したお猪口はイベントの際の記念品として来場者にも渡されたということであった。
4人目は、ことチームとして発表したデザイン学科卒業生の堀場建太さん。住民の平均年齢が81歳という福井市西部の過疎化進む集落 上味見地区において「木匠塾」という間伐材の討伐体験をはじめとして、この地区の住民と地域の祭りに参加して交流を深めたりしたことを報告。さらに現在、その上味見地区に移住し、いちほまれの生産にかかわったり、畑を借りて野菜栽培をし、湧き水で調理する地産地消の暮らしているという堀場さん。 美しい星空、蛍が舞い飛ぶ美しい水辺、地元の温泉などの魅力を語り、今後はお世話になっている地元住民の皆さん逆にサポートするために、地域の若手としての手助けやお土産開発などに関って行きたいと語っていた。
5人目は、福井工業大学大学院の黒川くんが映像チームとして、福井工業大学の各チームの活動(へしこサミット)に密着して撮影したビデオ映像を編集したり、福井の貴重な伝統行事の記録として、今立の和紙の里にある大瀧神社(越前和紙の里の紙の神を祀る神社として有名)の1300年大祭が行われた様子や、鯖江市で行われた福井の代表的なブランドであるメガネを盛り上げる生産者や業界、地域が協働する「めがねフェス」というイベントを記録編集した映像を製作したことを、実際の上映とともに紹介した。
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短い休憩を挟んで、後半は実際に福井の伝統産業のブランド化を体現するイベントや仕事に関っている豪華なゲストスピーカーによる 「地域資源を活かすブランディング活動の現場から」と題した報告があった。
>新山 直広氏
「インタウンデザイナーとして産地特化型デザイン事務所をめざし、支える〜 作る(自社ブランドを通じた流通網づくり) 〜 売る(SAVA! STORE) 〜 醸すという独自のコンセプトでの経営を進める。心がけているのは、地域外への気づきづくり。地域内への気づきづくり。来たれ若人、ものづくりのまちへというスローガンを掲げ、ものづくりに関わりたい若者が一番訪れる産地をつくりたいという想いで立ち上げた鯖江市河和田地区を中心にしたRENEWというイベントは、持続可能な産地づくり国内最大規模のオープンファクトリーイベントに成長してきている。」と語る。小気味よいテンポで話すその語り口と内容に引き込まれた。
>三田村 敦氏(デザイナー/ GOOD MORNING 代表)
地域資源を活かすブランディング活動の現場からということで、自分がイベントの総合デザインを手掛けるイベント、「めがねフェス」を紹介する。福井県鯖江市のめがねといえば、フレーム国内生産は94%。まさに地域資源である。このめがねの聖地をつくる、という想いから開催している「めがねフェス」も今年で6回。 「めがねよ、ありがとう。」をキーワードにめがねの楽しさを拡張する様々な仕掛けが評判を呼び、今年は17,600人が来場。半数が県外だった。」と言う。デザインの力でもともとある地域資源に輝きを与える好例である。このイベントには、福井工業大学デザイン学科の学生も多数ボランティアとして参加している。
>山口 祐弘氏(越前箪笥職人/ファニチャーホリック 代表)
「福井県内のいくつかの伝統産業の産地の枠を飛び越えて、異業種間の交流を積極的に進めている。職人それぞれがその地域のやり方やプライドを持っているために、これまで進まなかった協働の効果を自らの活動で感じている。」という。これまで続いてきた技をどうしても後世に繋いでいきたいという職人のネットワークを今後も拡げていただきたいし、若い人たちに未来の可能性を見せていただきたいと思う。
短い休憩を挟んで、話題提供していただいた3名の講師とモデレータ役の川島洋一教授によるトークセッションも行われた。その最後に、3名の若い講師の皆さんから、聴講していた学生たちに激励やメッセージも頂いた。
「小さくまとまらず、大胆に、失敗を恐れずチャレンジしてほしい。そこに大きな目標があり、それを達成したいなら既存のルールを気にしなくてもよい。社会人(デザイナー、職業人)になったらなかなかできないことだから。」 この3人の方々だからこそ響く言葉だ。
最後に末 信一朗先生(ふくいCOC+ 事業責任者/福井大学理事・副学長)の講評の中では、このワーキングを通して、特にひとづくりの顕著な成果を感じたとの言葉を頂いた。確かにこの5年間で関った学生たちが福井という場所にこれからも大きな貢献をしてくれる可能性を十分に感じる成果発表会であった。
Edited by KEI NEWS STAND
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講師紹介
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新山 直広 氏
大阪府生まれ。京都精華大学芸術学部在学中より河和田アートキャンプに参加し、卒業後、鯖江市に移住。鯖江市役所を経てTSUGI を設立。地域に寄り添うインタウンデザイナーとしてブランディング活動を展開。また、自社ブランド「Sur」をはじめ、福井のものづくりとデザインを体感できる小さな複合施設「TOURISTORE」、産業観光イベント「RENEW」の運営を手掛けている。グッドデザイン賞など受賞多数。
三田村 敦 氏
福井市生まれ。京都工芸繊維大学工芸学部卒業後、2005 年東京の(株)ブラビス・インターナショナルに入社。2009 年 「KIRIN 潤る茶」のパッケージデザインが Pentawards BRONZE AWARD を受賞。2012 年福井で真田悦子氏とGOOD MORNING を設立。2015 年「d museum NIPPON」47 人のグラフィックデザイナーに選出される。グッドデザイン賞など受賞多数。2014 年より福井工業大学デザイン学科非常勤講師。
山口 祐弘 氏
越前市生まれ。近畿大学生物理工学部を卒業後、香川県高松市の建設機械メーカー(株)タダノに入社。設計開発を担当。2005 年長野県立上松技術専門校に入学し木工を学んだ後、香川県高松市の特注家具メーカー(有)シティングに入社。2010 年越前市に戻り、越前指物工芸で修行し伝統技法を習得。2012 年ファニチャーホリック設立。2016 年LEXUS NEW TAKUMI PROJECT 福井県代表。「注目の匠」に選出される。
(プレスリリース資料より転載)
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