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はじめに 作品展と会場
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福井工業大学環境情報学部デザイン学科を4年前に卒業し、同大学院をはじめ県内外の大学院を修了した後デザイナーとして活躍しているメンバーを中心に、眼鏡製造会社、工務店、モックアップ製造会社勤務、越前和紙職人などデザインを学んだことを活かして社会人と活躍している同窓生の皆さんが、それぞれの日常から紡ぎだした作品を持ち寄り、作品展を開催しました。
その会場となったのは、福井県坂井市三国湊の市街地の古民家を改装した「※アーバンデザインセンター坂井(UDCS)」。
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※アーバンデザインセンター坂井(UDCS)
福井県坂井市三国町は北前船の寄港地として繁栄した湊町の中に位置しています。近年は、少子高齢化に伴う人口減少を始めとして、この辺りも多様かつ複雑な地域課題を抱えており、特に空き家・空き地の増加により歴史的な町並みの消失が大きな課題となっています。UDCSは公・民・学が連携しながら、それらの地域課題を解決するためのまちづくりを推進するプラットフォーム。福井工業大学は東京大学・東京都市大学と協働してこの湊町の活性化のための街中サインプロジェクトに参画するなど、このエリアをフィールドにした教育研究活動を積極的に行っています。
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出展作品の紹介
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それでは、出展作品をさらっと紹介していきたいと思います。
① 278体(般若心経にちなんだ数だそうです)の弥勒菩薩をコラージュし、独特の空間を表現した高頭さんの作品。故郷に戻って造形に関わる仕事に就きながら、音楽や仏教、サブカルチャーなど様々な分野に高いアンテナを張って忙しい中で楽しんでいる趣味がその作品に反映されている。PCで自ら描いた弥勒菩薩のイラストや写真を並べた空間が古民家の風情にうまく溶け込んでいた。
② 現在関東地区で活躍するデザイナー、赤澤草太さんの作品。高級時計店や量販店のチラシ、WEB広告の仕事に多く携わっている赤澤さんの作品は、さすがそのキャッチコピーとグラフィックがすぐ目に飛び込んできて見る者にそのメッセージがわかりやすく伝わってくるものばかり。「真似る」ことをキーワードにした今回の出展作品の傍らには、自分のこれまでの作品をまとめたポートフォリオも数量限定で置かれていた。
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③眼鏡のデザイナーとして働く荒谷さんが、身近なデザインのテーマとして取り上げたのは「フレーム(ふち)」。眼鏡のデザインにとっては最も大切なものだが、最近は印刷することもめっきり少なくなった写真の「フレーム」はその存在感が薄くなってきている。そのフレームの大切さをわかりやすい手法で展示した。
一眼レフカメラを肩にかけた荒谷さんの隣でタブレットを持って映っているのは、デザイナーとして活動する黒川拓夢さん。コロナ感染対応のためにリモート観覧者に説明をしているところを撮影した。黒川さん自身は、会社勤務をしている石塚喜朗さんとともに、「繋がり」をテーマに来場者参加型の作品を展示。社会人として様々な繋がりの大切さを知った二人だからこその空間で、来場した子供さんも楽しんでいた。(作品の写真がなくてすみません)
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④県内のデザイン関連の会社でグラフィックデザイナーとして活躍している楠さんの展示は、モノの使い方をちょっと変えるだけで、その価値がよみがえるという~「価値」のデザイン~の提案。職場で不要になったものや一人暮らしをする中で家族から送られてくるものなど自分の身近な暮らしのアイテムも、ちょっとしたデザインを加えるとおしゃれで便利なものになる!という目からウロコで気の利いた作品が並んでいた。写真は楠さんが自分の展示説明をしているところを荒谷さんがタブレットでがリモート中継している様子。
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⑤東京在住で、全国の多くの街のサインなども手掛けるグラフィックデザイナーの川堺さんの作品タイトルは「ニッチなデザイン」。特別どこかへ出かけるわけでもなく、変わらない日常の中であっても、視点や意識を変えることでその風景はもっと楽しめる。。。ということを体現しているグラフィックアート作品が並ぶ。福井と東京の街角で本人が撮影したスナップ写真だが、陰影のある独特のクールなタッチで切り取られ、統一感を感じるものに仕上がった。
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⑥県内の製紙所で勤務する谷口美紗貴さん。和紙を利用した「生き様とデザイン」という作品は、自分のこれまでの思い出の場面を自ら漉いた和紙にポップなイラストと写真で表現した。掛け軸風の装丁も素敵だ。大学卒業後はデザイン事務所で活躍、その後転職して飛び込んだ和紙漉き職人としての「いま」までがギュッと詰まっている。さらに、紙漉きで出る和紙の端切れを利用した「運がひらける?かみくじ(おみくじ)のコーナーも設置してあり、来場者を楽しませていた。
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⑦大学卒業後は、主に一般の住宅を手掛ける工務店に勤務する小柳さんの作品は「愛着のデザイン」。普段から建築施工の現場に出向くことの多い小柳さんはその過程で出る床材などの端材が気になっていたという。用途によってその風合いや重さ、強度が異なる木の特性を活かして何かデザインしてみようと思ったのが今回の作品。写真のコースターとそれをかける土台部分の木材はその特性を活かし使い分けているのだという。常に身近に扱っていた素材を使った作品はかなり実用的に仕上がっていた。
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おわりに
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卒業生の皆さんが、作品制作はもちろん、その広報や会場設営まで自分たちで行った「第2回それもデザイン?展 IN 三国」のレポート、いかがだったでしょうか。
「これからも後輩の卒業生に声をかけたりして、年に一度、県内のいろんな場所を使ってこのデザイン展を続けていきたい。」主催者の一人、楠大和さんはそう話してくれました。つくることが大好きな同窓生の皆さんらしいこうしたつながりが末永く続いていくことを楽しみにしております。
「知」をつなぐ。「未来」を創る。~福井工業大学~|BRANDING★ACTION FILE #009
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