本学 工学部 建築土木工学科 清水俊貴准教授は「まちづくりデザインセンター」の一員として、県内外の建築デザインに関する受託研究を多く手掛けています。今回は今年8月に完成した勝山市にある住宅を店舗へとリノベーションしたプロジェクトについて紹介します。この住宅は世界的に著名な建築家である磯崎新氏(1931-)による設計であり、建築学的に非常に価値の高いものです。現在は建物のオーナー様の自社ブランドスカーフを中心としたセレクトショップ&カフェとして生まれ変わっています。
なお、今回の記事は清水准教授からの寄稿により紹介します。
勝山には磯崎新設計の住宅が2棟あります。1983年に建てられた中上邸は磯崎新が設計した住宅シリーズの特徴であるヴォールト屋根が用いられ、多くの建築メディアに発表されています。今回リノベーションした住宅は未発表ではありますが、厳密な1050グリッドに基づいたコンクリート打放しの躯体が特徴的です。立方体の中に球体を内包したかのような抽象的で荒々しくも豊かさを感じる内部空間の表現にも、磯崎新による建築の特徴が多く見受けられます。
竣工から三十数年が経過し、防水や外壁、設備や内部空間の仕上げに至る様々な劣化を改修し、打放しコンクリートで表現された建築の素性の良さを整えることから工事を始めました。磯崎新の空間と常に向き合う苦しくも楽しい作業を行えたことは幸運です。
「建築のポテンシャルを生かしつつ、店舗へとチューニングしていく」という方針の下にオーナー様とディスカッションを重ね、店舗として必要なディスプレイの考え方、仕上げの提案や什器のデザインを行いました。2022年8月末オープン記念の工事記録写真展を行った後、店舗として開店しました。オーナーが名付けた新しい館名Nimbus(ニンバス)とはラテン語に起源を持つ雨雲、雪雲を指す言葉です。勝山の空の下、打放しコンクリートのグレーッシュな空間に色とりどりのスカーフが舞う様なディスプレイを意図しています。
本店舗リノベーションは福井新聞などでも取り上げられ、注目を集めています。今後、清水准教授は福井駅前新栄商店街アーケードの実測調査を通してリノベーションの可能性を検討しており、さらなる活躍が期待されます。
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